緑内障のAIの臨床研究について

当院では、緑内障のAIの臨床研究を行っております。
眼科AIコンテストの経験を活かし、AIの分野で緑内障治療に少しでも貢献できればと思いまして、 今回のモデルを作成しました。

緑内障による視野欠損を正確に把握する事はとても大切な事です。
視野欠損を過小評価すると治療の遅れの原因となり、逆に過大評価すると本来不要なはずの治療を行う原因となり得ます。
しかし、視野を正確に把握するために視野検査を頻回に行うと、患者及び医療側の両者の負担が増えてしまいます。
当院では比較的多くの緑内障の患者さんが来院されますが、中には残念ながら不幸な転帰を辿る患者さんもおられます。
何とかして現在よりも良い緑内障診療ができないかと考え続けまして、 現在の私の得意分野であるAIを使用したモデル(Pythonのプログラム)を作成する事にしました。

私の最終的な目標は、視野をより正確に推測するモデルを作成して多くの医院で広く使用して頂き、 不幸な転帰を辿る患者さんの数を少しでも減らす事です。 まずはその第一歩として、OCTの画像から視野を推測するモデルを作成しました。 改良を重ねて少しづつ精度を向上させ、現在は人間が推測するよりも明らかに正確に推測できるようになり、 ノイズに強く、且つ既報を上回る推測精度の視野推測モデルができました。 既に院内での臨床運用を行っており、日々の診療に役立てております。
他院での使用に関しては国の承認が必要かもしれませんし、ソースコードを一般公開してしまうと後で何かと問題になる可能性もあり控えております。
詳しい内容はプレプリントサーバー(https://doi.org/10.51094/jxiv.170)に公開しております。 現在、日本語→英語への翻訳作業の最中で、国際特許も出願済です。さらに良いプログラムにするため、数学の勉強と同時に、様々な手法を取り入れて日々モデルの改良を重ねております。

私はもともとコンピュータが大好きですので、PythonのPyTorchで作成した推測モデルをPyCharmで編集している時が最も楽しく、思わず時間を忘れて没頭し、 コンピュータの前に居ない時にも頭の中でも良いモデルを作れないか常に考えてしまっております。そんな私を支えてくれる家族にはいつも感謝しております。
AIの分野は日進月歩ですので、kaggleを含め、常に新しい情報を探しながらより良いモデルを作成するように心がけております。

研究のための費用は全て自費です。 可能な限り効率的に学習するようにモデルを作成しておりますが、今回のモデルはもともとの処理がとても重く、学習時には処理速度の早いグラフィックカード(GPU)が必須です。 それぞれのパーツを別々に購入し、自分で組み立てて使用しております。 そのほうが自分で厳選したパーツを使用でき、コストも抑えられ、信頼性も高くなると考えております。

全てのデータは医院の安全な場所にのみ保存し、 個人を特定できる情報を全て取り除いて、 OpenVPN(院内のESXi上のLinuxの仮想マシンへ、 楕円曲線暗号とIPv6フレッツ網内折り返しを併用した設定 でインストールしました。 VPNの中で2022年現在最も安全です)を使用して遠隔操作をする時にも、データは院内のみに保存しております。 余計なポートは全て塞ぎ、余計なサービスも立ち上げないようにしております。 個人で行うことができる範囲内で考えつく限りの対策を行い、セキュリティには特に気をつけております。
尚、キーボードはsystem76 Launchを使用しております( 詳細はこちらへ)。

AIでより正確に推測するためには、より多くの学習元となる情報が必要です。
現在のAIでは、OCTの機種が違ったり、測定条件が少しでも違うとうまく推測できません。
また、同一機種・同一測定条件の画像は、多ければ多いほど推測の精度が向上します。

より精度の高い視野の推測ができるようになれば、より早期の時点で、進行速度の早い緑内障患者さんを見つけ出して積極的に治療介入する事ができるようになり、末期に至る緑内障患者さんの数を減らす事ができるのではと考えております。

将来、推測の対象機種や条件を広げ、推測精度をさらに向上させ、 一般の医院で広く使用して頂けるような精度の高いモデルを作成するためには、 多施設共同研究が必須です。もちろん、先生方、メーカーの方々を含め、様々な分野の皆様の御協力が必要です。
既に複数の大学病院の先生方からお声をお掛け頂きました。とても有り難い事で、本当に感謝しております。
お問い合わせは、e-mailにて minamikoyasuganka@gmail.com までご連絡をいただければ有り難いです。

2022年12月記載



第2回日本眼科AI学会について

お陰様で、2021年第2回日本眼科AI学会の 眼科AIコンテスト の1位に入賞する事ができました。
発表の時間が短く、スライドの内容に関しての説明が不十分でしたため、
ホームページ上に載せる事にしました。
ご参考になりましたら幸いです。
学会で発表しましたスライドは こちら です。
尚、個人情報等に配慮し、発表時の眼底写真のデータは全てスライドから削除しております。
ご参考までに、スライドにする前の元の文字ばかりの長い説明データは こちら になります。
時間の関係で、スライドにする為に多くの情報を削りましたので、
後者の長い説明データの方がじっくり読むとわかりやすいと思います。
もし、上記のデータで何か問題等ございましたらご指摘をお願い致します。

2022年3月  南子安眼科 古山 誠(こやま まこと)